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大阪健康安全基盤研究所

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検査はどのように行なっているの?(残留農薬編)

掲載日:2020年4月30日

残留農薬のイメージって?

「残留農薬」という言葉を聞いて、「なんとなく不安・・・」   と思われる方は少なからずいらっしゃるかと思います。

農産物を生産するうえで、害虫等の被害を防ぎ収穫量を確保する、除草にかかる労働作業を軽減するなど、農薬の果たす役割は非常に大きいと考えられます。一方で、食品安全委員会が2018年に行った食品安全に関するアンケートでは、“残留農薬”に対して「とても不安に感じる」「ある程度不安を感じる」と回答した割合は約5割であり、消費者の残留農薬への関心の高さが伺えます。

今回は、当所で実施している残留農薬検査の方法について、農産物を例に詳しく解説します。

残留農薬検査の流れ


残留農薬検査は、以下の4つの工程を経て行われます。

1.農産物を切って細かくする(試料調製)

農産物に残留する農薬は、農産物中に均一に分布しておらず、濃度が濃い部分と薄い部分が混在しています。正確な残留濃度を求めるためには、農産物を細かく切って「均一」にし、濃度の差をなくすことが重要です。

農産物を細かく切る際には、包丁やフードプロセッサーなどを用いるのが一般的です。当所では、農産物を包丁等で大まかに切った後、パウダー状のドライアイスを混ぜて急速冷凍し、専用の機器(粉砕機)で粉砕を行っています。これを「凍結粉砕」といい、包丁やフードプロセッサーで行うよりも、非常に細かい均一な農産物のパウダー状の試料を調製することができます。


 

2.農薬成分を取り出す(抽出)

次に試料から農薬成分を取り出す作業を行います。試料を量り取り、農薬成分を溶かすことができる液体(有機溶媒)を加え、専用の器材(ホモジナイザー等)を用いて、撹拌します。撹拌後、pHを調整する薬品などを加えて良く混合します。次に遠心分離機を用いて、固体と液体に分離します。これら一連の作業を「抽出」といい、分離した液体部分を「抽出液」といいます。


 

3.要らないものを除く(精製)

抽出液には、農薬以外にも様々な成分(農産物に由来する色素、脂質など)が大量に含まれています。これらの成分は、分析の妨げとなるため、農薬以外の成分を取り除く作業(精製)が必要です。

精製には、「固相カラム」という器具を用います。固相カラムには、いろいろな種類があり、大きさも様々です。カラムの中には色素や脂質など、農薬以外の成分を吸着させる特殊な“粉”が詰まっており、目的に応じて固相カラムを使い分けます。抽出液を固相カラムに注入すると、農薬以外の成分が固相カラム内に吸着されるため、農薬成分とそれ以外の成分を分けることができます。このように抽出液から精製により不要な成分が取り除かれて「試験液」となります。


 

4.残留農薬の種類や濃度を求める(分析)

試験液を最新の機器を用いて分析し、“どのような農薬”が“どの程度含まれているか”を調べます。分析に用いる機器には、液体クロマトグラフ付き質量分析計(LC-MS/MS)やガスクロマトグラフ付き質量分析計(GC-MS/MS)などがあります。農薬成分のうち、水に溶けやすい成分はLC-MS/MSを、気化しやすい成分にはGC-MS/MSを各々用いて分析します。



試験液では、様々な成分が混ざっている状態ですが、LC-MS/MSやGC-MS/MSを用いて分析することにより、数百種類にもおよぶ農薬成分を分離することができます。農薬成分が検出された場合は、農薬の種類と濃度を求め、残留基準値* に適合しているかを判断します。

* 残留基準値とは?

厚生労働省は、農産物に使用した農薬が残留して摂取されたとしても、健康に影響がないと判断できるように食品衛生法で残留基準値を規定しています。残留基準値は農薬と農産物の組み合わせごとに定められており、これを超過した農産物は販売ができなくなります。

当研究所では、大阪府・大阪市の食品衛生監視指導計画に基づき、大阪府内を流通する農産物を対象とした残留農薬の検査を継続的に実施し、不適切な農産物が流通していないかを監視しています。今後も迅速かつ高精度な分析を行うために、分析法の検討を行い、食の安全・安心に貢献していきたいと思います。

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衛生化学部 食品化学2
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