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大阪健康安全基盤研究所

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食品中の放射性物質(放射性セシウム)の検査について

この記事は2年以上前に掲載したものであり、最新の情報と異なっている可能性があります。

大阪府(以下、府と記述します)の公衆衛生研究所では昨年度から、府内に流通する食品と学校給食中の放射性セシウムの検査を行い、その結果をホームページで公表しています。この検査に使用しているゲルマニウム半導体検出器の特長については、以前配信したメールマガジン(ゲルマニウム半導体検出器について)で紹介させていただきました。今回は、府が行っている検査の概要についてお話します。また最後に、公表している検査結果の見方について簡単に紹介します。

放射性セシウムについて

放射性セシウムには、質量数の異なるセシウム134とセシウム137があります。これらの放射性セシウムは不安定な物質で、安定化するためにベータ(-)壊変(注1)を起こし、これに伴ってガンマ線を発します。ゲルマニウム半導体検出器で、これら放射性セシウムから発せられるガンマ線を計測することにより試料中に存在する放射性セシウムの量を測定することが可能です。なお、放射性セシウム等の放射性物質の量を表すためには、ベクレル(Bq)(注2)という単位を使用します。1Bq/kgとは、1kgの試料中に1Bqの放射性物質が含まれることを表します。

検査方法について

食品試料は、府の所管する保健所あるいは中央市場から公衆衛生研究所に持ち込まれます。検査は、マリネリ容器という容器に細切または粉砕した食品試料を均一に詰めて、ゲルマニウム半導体検出器内で放射性セシウムから発せられるガンマ線を一定時間計測します。このとき、ゲルマニウム半導体検出器内に導入できる試料量が多い程、放射性セシウムから発せられるガンマ線を捉える効率が高くなります。逆に試料量が少ない場合は、効率が低くなります。仮に放射性セシウムが検出されない場合(不検出)でも、試料量が多い場合と少ない場合で比較すると、試料量が多い場合がより低い濃度レベルで検出されないことを判別することができます。この検出されないことを判別する濃度レベルを「検出下限」といいます。府では不検出の場合でも、セシウム134とセシウム137のそれぞれについて、検出下限が10Bq/kg未満(合計で20Bq/kg未満)になるように検査しています。

公衆衛生研究所の所有するマリネリ容器には、2リットルサイズ(大)と0.7リットルサイズ(小)があります(図1)。これらの容器で計測するためには、それぞれの容器の所定の量(容器の赤い線)まで試料を均一に詰める必要があります。(大)ではおよそ2kg強、(小)ではおよそ1kgの試料が必要になります(図2)。これらの容器に詰めた試料に隙間が生じたり、所定の量まで試料を詰めることができない場合は、ガンマ線を正しく計測できません。試料が少ない場合は、(小)を用いるように使い分けています。(小)の容器さえも満たすことができない試料については、U-8容器という極小サイズの容器を使用します。これを使用した場合は、およそ100から120gの試料で計測が可能です。しかし、この場合、試料量が少ないのでガンマ線を捉える効率が低くなり、上記の検出下限で判別するためには、計測時間を大幅に延長する必要があります。

図1. 左からマリネリ容器(大)、(小)およびU-8容器(極小)左端の定規の大きさは17cm
図1. 左からマリネリ容器(大)、(小)およびU-8容器(極小)
左端の定規の大きさは17cm

検査で放射性セシウムが検出された場合、セシウム134とセシウム137の合計値を検出された放射性セシウム量として、食品衛生法に定められる放射性セシウムの基準(一般食品100Bq/kg;牛乳・乳児用食品50Bq/kg;飲料水10Bq/kg)と比較します。この基準を超過した食品については、回収および流通停止等の処置が講じられます。

図2. 検査のためにマリネリ容器(小)に粉砕したニンジンを詰めた状態内袋を入れて赤い線まで試料を詰めます
図2. 検査のためにマリネリ容器(小)に粉砕したニンジンを詰めた状態
内袋を入れて赤い線まで試料を詰めます

検査結果について

最後に府が公表している検査結果の一例を紹介します(表1)(食品の安全性の確保について)(外部サイトにリンクします)。これらは、府で公表すると同時に厚生労働省にも報告されています。ご関心のある方は、一度ご覧になってください。

表1.検査結果の一例
表1.検査結果の一例

NO.294は、宮城県産の牡蠣(カキ)を検査し、セシウム134(Cs-134)およびセシウム137(Cs-137)を不検出と判定した結果です。Cs-134とCs-137を不検出と判定した基準となる検出下限は、それぞれ3.02と4.20Bq/kg未満であり、Cs-134とCs-137の合計での検出下限は、7.2Bq/kg未満(2桁になるように小数点以下第2位を四捨五入しています)とみることができます。

NO.293は、府内の小中学校で提供された給食1食分を混合して作成した試料を検査し、Cs-134およびセシウムCs-137を不検出と判定した結果です。Cs-134とCs-137を不検出と判定した基準となる検出下限は、それぞれ2.38と3.20Bq/kg未満であり、Cs-134とCs-137の合計の検出下限は、5.6Bq/kg未満(2桁になるように小数点以下第2位を四捨五入しています)とみることができます。

今年度は、4月9日から11月5日までに349検体の食品試料について検査を行いましたが、食品衛生法に定められる放射性セシウムの基準を超過した食品はありませんでした。今後も府民の皆様に安心していただけるように検査をして参ります。

語句説明

  • 注1:ベータ(-)壊変(ベータマイナスかいへん)とは、放射性物質が別の物質に変わる過程(壊変)のひとつ。ベータ(-)壊変では、原子核内の中性子が陽子に変わります。その過程でベータ線(-)が放出されます。放射性セシウムでは、ベータ線(-)に加えてガンマ線も発せられます。
  • 注2:Bq(ベクレル)は、放射性物質(放射能)の量を表す単位のひとつ。1Bqは、1秒間に1回の壊変が認められる放射性物質の量。

(食品化学課 高取 聡)

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