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大阪健康安全基盤研究所

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カンピロバクターの環境中における巧みな生存戦略 ー私って、意外とタフなんです!

掲載日:2018年8月20日

カンピロバクターは、食中毒の原因として注意すべき細菌の一つで、平成29年の食中毒件数(1014件)の約3割(320件)を占め、他の原因物質を抑えて一位となりました(平成29年厚生労働省食中毒統計)。今回は、食中毒の要因や予防法の他、知られざる環境中での生態についてご紹介します。

食中毒の原因と症状

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加熱不十分な鶏肉を食べることにより、カンピロバクターに感染することがあります。この場合、2~5日後に腹痛、下痢、発熱(多くの場合は38~39度と高熱です)を引き起こします。一方で、刺身やタタキのような生の鶏肉を食べていないにもかかわらず、食中毒が発生するケースもあります。これらは、調理環境中での二次汚染(交差汚染)によるものと考えられています。

カンピロバクターの特徴

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カンピロバクターは一般的な食中毒菌であるサルモネラや腸炎ビブリオ、腸管出血性大腸菌O157に代表される下痢原性大腸菌などとは異なり、空気中では増殖できない「微好気性」菌です。空気中ではむしろ時間の経過とともに死滅していきます。実験室では、カンピロバクターを増やすために特殊な環境(酸素濃度が5%程度の発育環境)が必要とされます。食品中で増殖せず、死滅するはずのカンピロバクターがなぜこんなにも多くの食中毒を引き起こすことができるのでしょうか?その要因の一つとしては、ヒトに病気を起こすために必要な菌量(発症菌量)が数百個と少ないこと(サルモネラでは一般的には十万~数千万個必要とされています)が挙げられます。また、別の要因として、カンピロバクターは環境中で生存するための特殊な能力を持っており、空気中でも完全には死滅せずに生残している可能性があります。以下に、カンピロバクターが保有する特殊な能力の一部をご紹介しましょう。


  1. 球状(Coccoid)化する -環境ストレスによって自身の形態を変化させる-

    カンピロバクターはらせん状の桿菌であり、通常は(図:白矢印)のような形態をしていますが、温度・飢餓・酸素などの環境ストレスによって、菌体を球状(図:緑矢印)に変化させて代謝活性を落とし、分裂・増殖をしなくなります。このような現象はコレラ菌など他の細菌にもみられる現象であり、生きているが培養不能(VBNC:Viable But Non-Culturable)な状態と定義されています。VBNC状態のカンピロバクターは呼吸活性を失っておらず、生きていると考えられています。

  2. バイオフィルムを形成する

    バイオフィルムとは、台所のシンク内や風呂場に発生する「ぬめり」に代表されるような微生物の存在形態の一つです。微生物が固体表面に付着・増殖し、菌体外に多糖類などを産生してこれらに囲まれて存在する集合体のことをいいます。細菌では、遊離状態で存在する菌に比べて、乾燥、紫外線や薬剤などに抵抗性を示すとされています。カンピロバクターもバイオフィルム形成細菌の一種であることが知られています。空気中で増殖できないはずのカンピロバクターが環境中でどのようにバイオフィルムを形成しているのか詳細はわかっていませんが、一つにはカンピロバクター単独ではバイオフィルム形成が見られないのに対して、環境中に存在する他の細菌と混合で培養することによってカンピロバクターのバイオフィルム形成が促進されることが報告されています。fig1_nakamura

食中毒を防ぐために

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本菌による食中毒は圧倒的に飲食店での発生が多く、平成29年に発生したカンピロバクター食中毒320件中257件(80 %)が飲食店を原因施設とするものでした。生の鶏肉を取り扱う飲食店の皆さま、キレイにしたつもりでもカンピロバクターはVBNC状態で残っているかもしれません。生の鶏肉を扱うまな板や包丁などの調理器具や調理台は、野菜などのそのままで提供する食品や加熱調理済の食品を取り扱うものと区別しましょう。冷蔵庫内で鶏肉を解凍した際のドリップも二次汚染の原因となります。冷蔵庫の中もこまめに掃除しましょう。冷蔵庫のとっ手も清潔に保つよう注意してください。調理環境の洗浄・消毒を実施し、カンピロバクターの二次汚染が起こらないよう細心の注意を払うことが大切です。

ドリップ:食肉や魚肉を解凍あるいは冷蔵で長期保管することによって、肉や魚の内部から分離して出る液体のこと。

 

お問い合わせ

微生物部 微生物課
電話番号:06-6771-8331