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大阪健康安全基盤研究所

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水が原因?カンピロバクター症にご注意ください! ~カンピロバクター症の原因は生の鶏肉だけではありません~

カンピロバクター食中毒の原因食品が流しそうめん??

2023年8月に患者数892人におよぶ大規模なカンピロバクター食中毒事例が発生しました。患者は飲食店で提供された「流しそうめん」を食べていました。えっっ?!カンピロバクター食中毒の原因が「流しそうめん」??と思われた方が多いのではないでしょうか。Campylo_Fig.2.png
国内の事例としては鳥刺しなど生の鶏肉による食中毒が圧倒的に多いカンピロバクターですが、実は古くから水を介した感染も見られます。本稿では水を介したカンピロバクター症事例について、国内外の事例を紹介します。冒頭で紹介した食中毒事例は、その一例です(表:事例No.2)。流しそうめんに使用した湧水がカンピロバクターに汚染されていたことが原因でした。
原因となった飲食店は例年、夏期のみなど期間を限定して営業を行っていましたが、この年の営業開始にあたり、湧水の水質検査を実施せず、未消毒のまま使用していました1, 2)。

水を介したカンピロバクター症事例 Campylo_Fig.1.png

カンピロバクターは1982年に食中毒の病因物質として届出対象の病原体になりましたが、その数年後に井戸水による大規模な集団事例が発生しています。国内の事例としては塩素消毒が不十分の小規模な簡易水道による事例が多くみられます。2025年4月に国内で発生した簡易水道水によるカンピロバクター事例(表:事例No. 1)では、近接する農業用水と水道水用の配水池との排水管が繋がっており、配管の詰まりにより農業用水が逆流して水道水に混入したことが原因とされています3)。

水への汚染要因は?

では、湧水や簡易水道水の汚染源は何だったのでしょうか。上記2事例において、汚染原因は明らかとされていませんが、いずれの発生場所も山奥の自然豊かな土地のようです。このような環境においては、一見きれいに見える水でも、実はさまざまな要因で微生物に汚染されている可能性があります。主な汚染源として、例えば、野生動物(イノシシ、シカ、野鳥など)や家畜(ウシ、ブタ、ニワトリ)による糞便汚染が考えられます。Campylo_Fig.3.pngカンピロバクターにはいくつかの種類がありますが、その中でもヒトの下痢症の原因として最も多いのがCampylobacter jejuniです。本菌はニワトリやウシ、ブタが保菌していることはよく知られていますが、カラス、スズメ、ハト、水鳥などの野鳥も保菌しています。野鳥は環境水のカンピロバクター汚染に関わっていると考えられています。
事例No.5のカナダで発生したマウンテンバイクレースにおける原因は、地面のぬかるみにより、発症者が泥水を浴びたり、転倒して口から泥水を摂取したことと結論づけられています。このレースコースは犬の散歩や乗馬などの利用があるほか、周辺でニワトリが飼育されており、さらに様々な野生動物が生息していたことが確認されています4)。事例No. 4の米国の障害物レースも同様に泥水を摂取したことが原因とされています。この事例では、泥水がウシやブタの糞便により汚染されていました5) 。このように、自然環境中の水や泥は、動物由来の糞便によって汚染されていることがあります。なお、表にはすべて示していませんが、海外の同様のレース事例においても、ウシの糞便による泥水の汚染が主要な要因として報告されています。
Campylo_Fig.4.png

(表)環境水が原因のカンピロバクター症集団事例(抜粋)

事例No.

発生年

国名

原因

患者数

参考文献##

1

2025年

日本(群馬県)

簡易水道

14名

参考文献3)

2

2023年

日本(石川県)

湧水(流しそうめん)

892名

参考文献1)および2)

3

2019年

日本(長野県)

旅館で提供された飲用水

45名

 

http://shokuei.sblo.jp/

article/186546001.html

4

2012年

米国(ネバダ州)

長距離障害物アドベンチャーレース

22名

参考文献5)

5

2007年

カナダ(ブリティッシュコロンビア)

マウンテンバイクレース

225名

参考文献4)

6

2006年

日本(福島県)

小規模水道

71名

阿部環ら, 病原微生物検出情報.28 :115-116 (2007)

7

2005年

日本(山梨県)

簡易水道

76名

大沼正行, 山梨県衛公研年報, 2005

8

2002年

日本(秋田県)

小規模水道

13名

斎藤志保子ら, 病原微生物検出情報.24 :12-13 (2002)

9

2000~2001年

フィンランド(3地域)

地下水、井戸水

1000名以上

Marja-Liisa Hänninen, et al., Appl. Environ. Microbiol., 2003

10

1990年

日本(広島県)

専用水道水

22名

石村勝之ら, 病原微生物検出情報., 11. 1990

11

1988年

日本(熊本県)

井戸水

234名

中村勉, 食衛誌30(5), 1989

## 参考文献の数字は以下の参考文献を参照。

さいごに

とはいえ、飲食店で提供される流しそうめんや蛇口をひねって出てくる水道水がカンピロバクターに汚染されていたら、自分自身の力では感染を防ぎようがありませんね。そのため、飲用に供する水の安全性は、事業者側の適切な管理に大きく依存します。湧水や井戸水、簡易水道などを使用して飲食を提供される事業者等は、食中毒による事故が起こらないよう、保健所の指導のもとで定期的な水質検査と塩素消毒を徹底しなければなりません。一方で、私たち自身も、湧水をそのまま飲まない、湧水や井戸水を使用した飲食物に注意するなど、日常の中でできる対策を意識することが大切です。

#挿入図の一部は生成AIにより作図しています

参考文献

1)緩詰沙耶ら.湧水に起因したカンピロバクター食中毒.石川県保健環境センター研究報告書61: 1-4 (2024)

2)北川恵美子.湧水に起因したカンピロバクター食中毒–石川県で発生した事例について–.モダンメディア71: 239-243 (2025)

3) 高橋裕子.簡易水道水を原因としたカンピロバクター食中毒事例.日本細菌学雑誌.81(1):26 (2006)

4)Stuart, T. L., et al. Campylobacteriosis outbreak associated with ingestion of mud during a mountain bike race. Epidemiol. Infect. 138: 1695-1703 (2010).

5)Centers for Disease Control and Prevention (CDC). MMWR, 63(17): 375-378 (2014)

 

カンピロバクターについては、以下の記事でも紹介させていただきました。
興味のある方はご一読ください。

生や加熱不十分な鶏肉によるカンピロバクターの食中毒にご用心!

https://www.iph.osaka.jp/s008/20240119114936.html

食中毒起因カンピロバクターの遺伝子型別を実施しています

https://www.iph.osaka.jp/s008/1000/210628/20210628095752.html

カンピロバクターの環境中における巧みな生存戦略―私って、意外とタフなんです!https://www.iph.osaka.jp/s008/1000/20180816111646.html

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