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大阪健康安全基盤研究所

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かわら版@iph 12号 2004年8月31日発行

配信された文面をもとに、一部修正を行っています。URLやメールアドレスは配信当時のものです。

目次

  • お知らせ
  • 今月の話題
    「大阪府におけるウエストナイル熱に関するサーベイランスについて」
  • 研究の窓から
    「生活排水処理と浄化槽」その2
  • ここが知りたい一問一答、一般の方からの質問にお答えして
    「酸化チタンの毒性」
  • 質問・問合せはこちらまで
  • 講読の新規登録/停止はこちら
  • 12号に対するご意見はこちら

お知らせ

「公衆衛生研究所公開セミナーのお知らせ」

メールマガジン「かわら版@iph」第10号で開催の予告をするとともに演題に関するアンケートをお願い致しました、公衛研「公開セミナー」の開催日時と演題が決まりましたのでお知らせします。演題はアンケートでご要望の多かった「インフルエンザ」などです。皆様お誘いあわせの上、多数ご参加くださいますようお待ち致しております。

なお、セミナーの各演題概要、参加申し込み方法等、詳細につきましては、次号のメールマガジンおよび当所ホームページに掲載します。

  • 日時:平成16年11月10日(水曜日)午後2時から4時
  • 場所:大阪府立公衆衛生研究所 4F講堂(大阪市東成区中道1-3-69)
  • 演題(予定):(1)インフルエンザ(2)食品の安全性(3)飲み水の安全性

今月の話題

「大阪府におけるウエストナイル熱に関するサーベイランスについて」

先日、米国を旅行した沖縄県の女性がウエストナイル熱に似た症状を示し、「日本人第1号か」と関心を集めました。当所では、平成15年より大阪府健康づくり感染症課や環境衛生課、保健所と協力して、ウエストナイル熱の大阪への侵入を監視するために、蚊や死亡カラスについてウエストナイル熱の病原体である、ウエストナイルウイルスについての調査を行っています。

蚊は6月末より大阪府下17箇所にトラップを設置し、2週間に1度蚊を捕集してウイルス検査を行っています。死亡カラスについては、府営公園において、厚生労働省の通知に従い、カラスが複数羽死亡しており、死亡原因が不明で、鮮度が良い状態のとき検査対象とし、主にカラスの脳についてウイルス検査を行っています。

今年度の調査では、現在(08月25日)まで、蚊は2902匹(アカイエカ2127匹、ヒトスジシマカ750匹、コガタアカイエカ23匹、シナハマダラカ1匹、同定不能蚊1匹)、カラスは3羽検査を行いました。全ての検体についてウエストナイルウイルスは検出されませんでした。今後、カラスは随時、蚊は9月末まで調査を続ける予定です。

(ウイルス課 瀧、弓指)

研究の窓から

「生活排水処理と浄化槽」その2

(その1)では、既設浄化槽にも窒素・りん除去が課せられ、多くの施設でその対応が必要となっていることを述べました。今回は、既設浄化槽に適用可能な、窒素・りん除去の研究について説明します。

処理方式は、汚泥発生量の増加をまねかない、生物学的窒素・りん同時除去法を検討しました。窒素・りん除去を生物学的に行うには、嫌気(注2)ゾーン・無酸素ゾーン・好気(注1)ゾーンを適切に組み合わせる必要があります。本研究のポイントは、ばっ気(注3)槽で間欠ばっ気を導入して、窒素除去に必要な無酸素ゾーンと好気ゾーンを形成するとともに、りん除去に必要な嫌気ゾーンの形成に既設の流量調整槽を利用したことにあります。そのために、通常は沈殿槽からばっ気槽流入部に返送している返送汚泥の一部を、流量調整槽に返送する配管設備を増設しました。

既設浄化槽において運転方法を本方法に変更してから約1ヶ月程度で、新設浄化槽に適用される窒素10mg/L、りん1mg/Lの規制値を下回り、その後も、窒素・りん濃度はかなり低い濃度で推移していることを確認しました。また、年間を通じて安定した処理を行う運転条件や、維持管理する上で指標となる項目についても検討しました。

さらに、この施設で、設計時の運転方法であるBOD(注4)除去のみを目的とした長時間ばっ気運転と、この方法によるBOD・窒素・りん同時除去運転での電気使用量を比較したところ、1年間で約44万円に相当する電気量が削減できることがわかりました。

排水処理技術の進歩は著しく、新しい施設では高度な処理が可能です。しかし、既設の浄化槽などのすでに設置されている処理装置には、そのような技術は組み込まれていません。今回述べましたように、施設改修が簡易で運転コストが増加しない窒素・りん除去技術があれば、既設の施設でも対応が可能になります。本研究の成果が、他の施設へ適用できるよう今後も研究を継続していく予定です。

  • 注1 好気:水中に遊離の酸素分子がある状態。
  • 注2 嫌気:水中に遊離の酸素分子および結合型酸素(硝酸性窒素など)もない状態。
  • 注3 ばっ気:空気と液体を接触させて、液体に酸素を供給すること。
  • 注4 BOD:生物化学的酸素要求量(Biochemical oxygen demandの略)。水中の有機物などの汚濁物を微生物が分解するときに利用する酸素の量。水中の有機物汚濁負荷の指標となる。

(環境水質課、奥村)

ここが知りたい一問一答、一般の方からの質問にお答えして

「酸化チタンの毒性」

Q、最近酸化チタンを使用した商品を耳にしますが、毒性などはないのでしょうか。

A、酸化チタンには2種類ありますが、市場にでているのは二酸化チタンです。ここでは、二酸化チタンについてお答えします。

化学的に安定な結晶性粉末で、生体に対する作用がないと考えられており、急性毒性や発がん性の報告があまり見あたりません(国際化学物質安全カード)。IARC(国際がん研究機関)の発がん性分類では3(ヒトに対する発がん性については分類できない)になっています。生活の場では、問題となる毒性はないようです。

太陽光由来の紫外線を吸収する性質があり、白色の顔料や食品添加物、化粧品などに使われています。また、最近では光触媒作用を利用した商品が開発されています。ビルの外装や空気清浄機などがあります。

顔料や化粧品に使われている二酸化チタンと、光触媒に使われているものとでは結晶構造が異なり(ルチル型とアナタース型)、顔料としては光触媒作用のないルチル型が良質なものとされています。超微細な粒子では透明に近い粉末になり、日焼け止め化粧品などにも使われています。

化学的には安定ですが、粉末を扱う産業現場では塵肺の原因になる粉塵として注意が必要です。日本産業衛生学会は吸入性粉塵(注5)として1mg/立方m、総粉塵(注6)として4mg/立方mを勧告しています。また、アメリカでは総粉塵として10mg/立方mが許容濃度となっています。特に超微細な粒子が開発されていることが問題となりそうです。最近の報告では、直径250nm(ナノメーター:100万分の1mm)と29nmの粒子を同じ重量だけ動物の肺に直接入れたところ、大きい粒子では炎症反応は起こりませでしたが、小さい粒子では炎症が起こることが示されています(Occup Environ Med 2004,61,442-447)。技術の発展と共に注目しておくことが必要だと考えられます。

  • 注5 吸入性粉塵:日本産業衛生学会の定義では、直径が7ミクロン以下の粉塵
  • 注6 総粉塵:すべての粉塵

(生活衛生課 熊谷)


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